「IPOって、当たれば儲かるらしいよ」

同僚からそう聞いて、気になっている人も多いと思います。とはいえ、何に当たるのか、なぜ儲かると言われるのかがわからないままだと、申し込む気にはなりませんよね。

結論から書きます。個人がやるIPO投資は、上場前の株を、あらかじめ決まった価格で買う権利の抽選に参加することです。

当選した株が上場初日に値上がりすれば、その差が利益になります。外れても、お金は1円も減りません。

手間が少なく、リスクを抑えて始められる。会社員に人気なのはそのためです。

IPOは「会社が株を初めて市場に出すこと」

IPOは「Initial Public Offering」の略で、日本語では「新規公開株式」といいます。

それまで創業者やベンチャーキャピタル(スタートアップに出資する投資会社)など一部の人しか持っていなかった株を、証券取引所で誰でも売買できるようにすることです。

会社が上場するのは、主に資金を集めるためです。上場の際に新しく株を発行して投資家に買ってもらえば、その代金を事業に使えます。これを「公募」と呼びます。

既存の株主が持ち株を手放す「売出し」もあわせて行われることが多く、IPOで売られる株はこの2種類でできています。

ただし、どの会社でも上場できるわけではありません。取引所の審査を通る必要があります。

東京証券取引所にはプライム・スタンダード・グロースの3つの市場があり、新しく上場する会社の多くは、成長企業向けのグロース市場を選びます。

プロの投資家向けの市場(TOKYO PRO Market)を除くと、新規上場は年間でおよそ60〜90社ほどで推移しています。時期によって波はあるものの、月に数社から多い月で10社前後のペースで新しい銘柄が出てくる計算です。

個人は「上場前に、公開価格で」買える

上場したあとの株は、普通の株と同じように市場で売買されます。IPO投資が普通の株と違うのは、上場する前に、証券会社を通じて「公開価格」で買えるという点です。

公開価格は、上場前に売り出すときの1株あたりの値段のことです。

日本株は原則100株単位で売買します。公開価格が1,200円なら、100株で12万円。この金額を用意できれば、抽選に参加できます。

人気ライブのチケット抽選をイメージするとわかりやすいかもしれません。

定価で申し込んで、当たれば買える。外れたらお金は戻ってくる。当日の会場(上場後の市場)では、チケットに定価以上の値がつくこともあります。

申込から購入までは、だいたい次の流れです。

  1. 証券会社が「仮条件」(公開価格の目安になる価格の幅)を発表する
  2. 投資家が希望の株数と価格を申告する(ブックビルディング、略してBB)
  3. 公開価格が決まり、抽選が行われる
  4. 当選したら購入の手続きをする
  5. 上場日を迎える

BBの受付期間は5営業日前後のことが多く、締切の時刻も証券会社ごとに決まっています。仕事をしていると、うっかり見逃しやすい長さです。

それぞれの手順は「IPOの申込から当選・売却までの流れとスケジュール」でくわしく取り上げます。

よくある場面 昼休み、コンビニのおにぎりを片手に証券アプリを開くと、前から気になっていたアプリ開発会社の名前がある。「上場するんだ」と思って詳細を見たら、BBの受付は前の日に終わっていた。IPOを始めたばかりの人が、いちばん最初に味わいがちな悔しさです。

なぜ「儲かりやすい」と言われるのか

カギは「初値」です。初値は、上場した日に市場で最初についた株価のことです。

公開価格は、上場後に買い手がつきやすいよう、実際の需要より低めに決まりやすいと指摘されてきました。いわゆる「IPOディスカウント」です。

そのため、人気の銘柄では初値が公開価格を大きく上回ることがあります。

数字で見てみましょう。公開価格1,500円の株に100株当選すると、購入代金は15万円です。

初値が2,400円なら、上場初日に売るだけで9万円の値上がり益になります。ここから税金(約20%)が引かれます。

なお、IPOの株を公開価格で買うときは、売買手数料がかかりません。

民間の集計によると、過去数年の実績でも約7〜8割の銘柄で初値が公開価格を上回っています。

「当たれば儲かるらしい」という噂には、それなりの根拠があるわけです。

「当たらない」と「値下がり」の2つの現実

もっとも、良い話ばかりではありません。

ひとつ目は、とにかく当たりにくいことです。人気の銘柄には、売り出す株の何十倍もの申込が集まると言われます。

抽選のやり方も証券会社によって違います。1人1票の平等な抽選をするところもあれば、用意できる資金(申込株数)が多い人ほど当たりやすいところもあります。

よくある場面 「とりあえず全部申し込もう」と決めて、1か月で5社のBBに参加する。結果はすべて落選。メールで届く「残念ながら」の文面にも見慣れてしまい、3か月目には申込そのものをやめかけている——。落選続きで離れていく人は、決して少なくありません。

ふたつ目は、値下がりすることもある点です。初値が公開価格を下回ることを「公募割れ」といいます。公開価格2,000円の株を100株買って初値が1,700円なら、3万円の損です。

相場全体が冷え込んでいる時期や、売り出す株の多い大型の案件で起きやすいとされます。

当たりにくさは、申し込む回数で補うのが基本です。値下がりのリスクは、申し込む前に銘柄の中身を見ることで、ある程度は避けられます。

これからIPOを始めるなら、この3つから

  • 証券会社の口座を開く:口座がないとBBに参加できません。開設には数日〜1週間ほどかかることがあります。IPOの取扱数が多い証券会社から1社選ぶのがおすすめです。
  • ipostのLINE通知を登録する:新しく上場が決まった銘柄や、その日にBBが始まる銘柄を毎朝受け取れます。昼休みに気づいたら締切後だった、という見逃しを防げます。
  • 上場予定の銘柄を見て、100株申し込んでみる:IPOスケジュール一覧に、BBの開始月ごとに銘柄が並んでいます。まずは「受付中」の銘柄を1つ選び、実際に申し込んでみましょう。仕組みは一度手を動かしてみるのが一番の近道です。

1銘柄でも実際に申し込んでみると、画面の見方や流れがぐっと身近に感じられるはずです。